変更の概要
出入国在留管理庁は、令和8年10月1日付けで「永住許可に関するガイドライン」を改定しました。改定後のガイドラインは、令和9年4月1日以降の申請から適用されます。ただし一部の考え方は、すでに申請中の案件にも適用されます(下記「施行日・適用時期」を参照)。
改定後のガイドラインでは、永住許可の3つの要件(素行善良要件・独立生計要件・国益要件)について、審査で考慮する要素が具体的に示されました。また、この改定により、「我が国への貢献」に関するガイドラインは廃止されます。
背景には、令和6年の入管法等改正法(令和9年4月1日施行)があります。この改正により、入管法第22条第2項に「この法律に規定する義務の遵守、公租公課の支払等」の文言が追加されます。ガイドラインは、この文言について、従前のガイドラインの記載を法律上の要件として明確化したものであり、以前の審査でも考慮されていたと説明しています。
公表された内容
ガイドラインに示された主な考慮要素は、次のとおりです。
収入
- 申請者の世帯年収が、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準(「年収水準」)に、継続して達しているかを考慮します。
- 「家族滞在」など、就労資格ではない在留資格で在留する同じ世帯の人の収入は、世帯年収に合算されません。
- 申請者が扶養する親族は、同居していなくても世帯人数に加算されます。外国に住む親族も含みます。
年金
- 年収水準で30年間働き、その間厚生年金に加入していた場合の将来の年金見込額(「受給年金水準」)に達しているかを考慮します。
- 達しない場合でも、不足する生活資金を補える金融資産(「補填資産」)があると認められれば、受給年金水準に達しているものと評価されます。
税・社会保険料(公租公課)
- 「公課」には、公的医療保険や公的年金などが含まれます。これらを適切に支払っていない場合は、消極評価(マイナスの評価)となります。
- 申請時点で未納がなくても、過去に滞納処分を受けたなど、過去に適切に支払っていない状況が認められる場合も、原則として消極評価となります。
刑罰法令違反
- 過去に拘禁刑(懲役・禁錮を含む)や罰金刑を受けた人などは、原則として消極評価となります。
在留期間・出国期間
- 原則として、引き続き10年以上日本に在留しているかを考慮します。このうち、次の2点も考慮されます。
- 就労資格または居住資格で、引き続き5年以上在留しているか。
- 現在の在留資格について、最長の在留期間を持っているか。
- 過去10年以内に、合理的な理由なく次のどちらかに当たる場合は、原則として消極評価となります。
- 1回の出国で半年以上日本を離れていた。
- 出国の合計が2年6月以上になる。
- このガイドラインでいう「就労資格」には、次の在留資格は含まれません。
- 技能実習
- 育成就労
- 特定技能1号
- 企業内転勤
- 一部の特定活動
日本語能力・日本の制度やルールの理解
- 原則として、「日本語教育の参照枠」のB1相当レベル以上の日本語能力を持っているかを考慮します。ただし、高度人材外国人とその家族などは、必ずしも本人にB1相当レベルを求めない場合があります。
- 「生活・就労ガイドブック」に書かれている事項を中心に、日本の制度・ルールを理解しているかを確認します。確認は、出入国在留管理庁長官が指定する方法で行われます。
子の就学
- 学齢期(義務教育の期間)の子を養育している場合は、子が小学校または中学校に通学していることなどを考慮します。
施行日・適用時期
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改定日 | 令和8年10月1日 |
| 適用 | 令和9年4月1日以降の申請から |
| 申請中の案件への適用 | 「収入」と「公共の負担」の考え方は、改定日の6か月前の日以降に申請し、改定日時点で審査中の案件にも適用 |
在留期間「3年」の扱いには、経過措置があります。
- 令和9年3月31日までの申請:在留期間「3年」の人も、「最長の在留期間」で在留しているものとして扱われます。
- 令和9年4月1日以降の申請:次の条件をすべて満たす場合に限り、同じように扱われます。
- 令和9年3月31日の時点で、在留期間「3年」を持っている。
- 令和9年4月1日以降に行う、初めての永住許可申請である。
- その「3年」の在留期限までに、申請の結果(処分)を受ける。
対象者
日本で永住許可を申請する外国人です。企業にとっては、永住許可の申請を考えている外国人社員とその家族が対象になります。
企業への影響
※ここからは、上記の公式資料をもとにした当サイトの分析です。
- 社会保険・税の手続き:社会保険への加入や、給与からの所得税・住民税の差し引きと納付が適切に行われているかは、社員の永住審査に関わります。年金と公租公課が、考慮要素として明示されているためです。
- 在留資格の経歴:「企業内転勤」「特定技能1号」などで在留した期間は、ガイドラインでいう「就労資格」での5年に含まれません。こうした在留資格で受け入れた社員は、永住申請の時期に影響が出る可能性があります。
- 海外出張・海外赴任:長期の海外出張や海外赴任は、「出国期間」として消極評価につながる可能性があります。
- 書類の依頼:社員から、在職証明書や給与・社会保険に関する書類を求められる機会が増えることが考えられます。
企業が確認すべき事項
- 外国人社員の社会保険(健康保険・厚生年金)の加入状況と、保険料・税の納付に漏れがないか
- 源泉徴収票や住民税の課税証明書など、収入を示す書類をすぐに用意できるか
- 永住申請を考えている社員の、これまでの在留資格(企業内転勤・特定技能1号などの期間)
- 過去10年の海外出張・海外赴任の期間(1回で半年以上、または合計2年6月以上に当たらないか)
- 適用時期(令和9年4月1日以降の申請)と、すでに申請中の社員への一部適用
今後の見通しと未確認の事項
※以下は見通し(要確認)です。公式資料で確認できたものではありません。
- 審査で考慮する要素が具体的に示されたことから、審査がより慎重になる可能性があります。
- 公式資料には、次の点が書かれていません(未確認)。
- 年収水準・受給年金水準・補填資産の具体的な金額
- 制度・ルールの理解を確認する「指定する方法」の内容と開始時期
- 日本語能力(B1相当)を何で証明するか
- 改定前のガイドラインと比べて、新しく加わった基準はどれか
個別の社員が永住許可の要件を満たすかどうかは、本人の状況によって異なります。具体的なご判断は、専門家にご相談ください。
参照資料
最終確認日: 2026-10-24
